和食店の店舗内装デザインと効果的なレイアウト

日本の伝統である和食を提供する飲食店の店舗内装を考えるなら、照明や核の材質、調度品といった内装に日本的な要素を組み込んだ空間づくりが重要です。しかし、西洋的な生活習慣も浸透した現在では、和モダンな店舗内装を取り入れることも忘れてはなりません。また、和食店の店舗内装は提供するメニューと切っても切れない関係にあるので、和風な店舗内装とその特徴をよく理解し、提供メニューと相性の良いレイアウトをすることが大切です。

生け簀は和食店ならではのアピールポイント

店舗内装

活魚をそのままに展示することのできる生け簀は魚市場や寿司店で用いられることの多い設備ですが、居酒屋を含め和食を提供する飲食店で目にすることも少なくありません。寿司店のみならず、魚介類を使ったメニューが主力となる店舗であれば、これを内装に取り入れるとインパクトがあり、集客につながるといえます。お客様の目に留まりやすい店頭か、カウンター席がある店舗の場合はカウンターの奥側に設置することが多いですが、生け簀の中の活魚はそのまま商品として提供することになるのでお客様に対する訴求力だけでなく、食材管理の利便性を考慮した配置にすることも検討しましょう。また、設置の目的は生体の展示ではなく贖罪の保管や管理といえるので、生け簀周辺が衛生的かつ安全に保てるデザインにすることが大切です。原則として活魚は数日のうちに提供されるので基本的に給餌は行いませんが、水苔の発生は汚れの原因になるので適度に水温を低くするなどして日ごろから対策するようにしましょう。

和食店のカウンター席は木材を活かすのがベスト

バーや寿司店で定番のカウンター席は一人でも利用しやすく、対面で調理が行われる場合にはメニューの調理過程を紹介したり、食材についての説明をしながら提供したりと多くのメリットがあります。また、生け簀を設置している店舗であればカウンターの向こうに活魚が見える環境なので、お客様は自分で食材を選んで注文するという特別な体験をすることが可能です。和食店にこうしたカウンター席を設置する場合はスタイリッシュなスマートさよりも、木目の質感やくつろぎを意識したデザインにした方が和の雰囲気になるでしょう。例えばテーブルは均一な塗装よりも木目の質感が感じられるデザインにし、背が高いスツールよりはゆっくり腰掛けられる背もたれの低いチェアにした方が和風にみえますし、チェアに和風な座布団を組み合わせるのもおすすめです。加えて対面で調理を行う場合は作業台周辺が汚れやすくなるので、清掃しやすい構造にするともに汚れが目立たない濃色を取り入れてメリハリあるデザインにすることも一考の価値があります。

清潔感ある濃色を取り入れた空間を作る

和食の中でも寿司や精進料理といったヘルシーで素材を生かしたタイプのメニューを提供する場合、店舗内の清潔感は重要です。しかし、清潔感があるという理由で白やベージュを基調にすると、汚れが目立ちやすく手入れが大変になったり、味気なく無機質な印象になったりするので濃色を入れてメリハリや落ち着きを演出することも忘れてはなりません。効果的に濃色を使うのであれば、手の届きにくい天井や鴨居のように高い場所、あるいは汚れの沈着が避けられない喫煙席のある店舗なら喫煙席周辺を濃い色にするといった手法があります。また、古民家風の古びた佇まいを演出する場合も焦げ茶色のように温かみのある濃いめの色を基調にすればそれっぽくなります。ただし、同じく濃色を取り入れるとしても、黒や青の使い過ぎはよくありません。黒はスタイリッシュである反面重苦しさを出すので小規模な店舗だと窮屈に見える可能性がありますし、青系の色は食欲を減退させるので装飾やアクセント程度にとどめましょう。

日本らしい座席レイアウトで集客力を向上させる

一般的にレストランといえば椅子とテーブルのレイアウトですが、和食の場合は座敷席や座椅子、あるいは掘りごたつといった他にない特徴的な座席レイアウトとの相性が良いです。座敷席の場合は靴を脱いでくつろげるだけでなく、椅子だと足がつかずに落ち着けない小さなお子様も落ち着いて座れますし、橋やスプーンを落としてしまってもご家族がすぐに片付けられるので気兼ねも少なくなります。ただし、座敷席は特にお子様と一緒でも入りやすいお店だと、食べこぼしによる汚れのリスクが高くなるので、たたみ張りにはせず板張りとし、クリーニングしやすい座布団を備えるのがよいでしょう。また、和食ならではのレイアウトである掘りごたつは、靴を脱ぎつつも椅子に腰かけている様な座り心地なので、足のしびれや姿勢の崩れを気にせずくつろげるのが特徴です。構造上手入れに手間がかかることは避けられませんが、現在では掘りごたつが珍しい物といえるので店舗の集客力を向上させるアピールポイントには最適です。

純和風な店舗内装は使い方に注意が必要

和食を提供するなら純和風の日本建築をイメージした内装にしたいと考えるかもしれませんが、純和風な佇まいは敷居の高さにつながる可能性があるので注意が必要です。住宅が洋風になり、飲食店がテナントで営業することも少なくない現在でも日本建築で営業されている飲食店といえば、料亭や寿司店といった一般的には高価なイメージのある飲食店が多いでしょう。もし、これから店舗内装を行う和食店が伝統的な料理や高級食材を取り入れた料亭のような業態であるなら、現在ではあまり見かけなくなった古来の日本建築を取り入れた客席レイアウトが適しているといえますが、カジュアルな創作料理をリーズナブルに提供する業態なら入りやすいモダンさが必要です。また、畳を取り入れる場合は清掃や畳替えのメンテナンスにコストがかかるので、カジュアルな店舗ほど板張りや土足で入れるタイル張りの方がよいでしょう。店舗内装に純和風なテイストを加えるなら、日本らしい違い棚や障子戸などを店舗装飾に取り入れるのがおすすめです。

和モダンな店舗内装で入りたくなる空間を作る

和食店の店舗内装を考えるなら、カジュアルな飲食店と同様な入りやすいレイアウトに和のテイストを加えた和モダンなデザインがおすすめです。一般的に日本風の建築は木目を生かした質感や紙を貼った障子や襖の引き戸、落ち着いたカラーの土壁といった要素があります。また、畳に代表されるように自然由来の素材を使った調度品も多くあることから、店舗内装の際は木目を感じる調度品を取り入れるだけでなく、そこに竹細工や籐製品などの植物性素材で作られた調度品を加えることで日本らしい温かみが演出できます。加えて和紙風のシェードを使って温かみを出したり、障子戸風の衝立を設置したりして和室の様な落ち着きを作るのもよいでしょう。もちろん、座敷席や掘りごたつの席を設置するのもよいですが、カウンター以外にもバリアフリーに入れるテーブル席を設置すれば、より広いお客様へのアピールが可能です。和モダンな店舗内装は何をどう取り入れるかで個性が出るので、他にない雰囲気づくりができるのも特徴です。

まとめ

和食店の店舗内装を行う場合、敷居の高くないカジュアルさと和風な落ち着きを併せ持った和モダンテイストが最も効果的といえます。また、日本らしい座敷席や掘りごたつの導入はくつろげる空間づくりの役に立ち、お子様連れのお客様も来店しやすい要素となります。和モダンな店舗内装を意識するなら木目を生かしたカウンターや和紙風のランプシェードは取り入れやすい要素ですが、障子や竹細工のようにナチュラルな調度品を用いることもおすすめです。